
空を見上げてきれいな雲だったりすると反射的に写真に収めたりすることがよくあるでしょう? 僕はよくある。でも、その雲にはきちんと名前がある、ということを知ったのはごく最近だ。すべての雲には1つ1つ名前があって、その成因や見える状況がまったく違う。たとえば雲の代名詞である積雲は、暖められた大気が対流によって上空へと運ばれることでできる。だから積雲を見るのは青空の日が多い、といった具合。
雲は高さと形で10種雲形のいずれかに分類されている。これは世界中で共通している分類方法だ。土地によって呼び方が変わったり(むらくもや入道雲など)、さらに細かく分類されていることもあるが、とりあえず10種雲形を知っていれば、世界のどこへ行っても同じ雲として見ることができるようになる。
こうしたことは簡単な気象学の本にもひと通り書いてあるので、読めばそれなりにわかった気になる。でもクラウドウォッチャーの視点で書かれた本書を読むと、知識として分かるだけでなく、見て楽しみたいという気持ちが生まれてくるのが不思議だ。クラウドウォッチャーというのは、名前の通り雲を見て幸せになれる人たちのこと。「目的もなく、肩肘も張らず、人生をまじめに生きるためのクラウドウォッチングという楽しみを称える」というのが本書だ。
そもそも気象の本として、本書はかなり異例だ。なにしろ340ページあまり、雲のことしか書かれていない。写真もそれなりにあるのだけど、95%くらいは文章。雲の外観や発生のメカニズムといった気象学の話だけでなく、詩人や思想家、神話や宗教などから集めた雲のエピソードがたっぷりと仕込まれている。科学と芸術を分けることなく雲を愛でるというのが本書のスタンスで、読み進めているうち、いつのまにか雲を眺めるのが好きになってしまう(楽しそうに思うようになる)。そういう伝染力の高い本だ。
この本を読んだあと、自分自身に小さな変化もあった。去年沖縄で撮った写真をパソコンに表示したときのことで、朝日を浴びてもくもくと成長している雄大積雲や、シラスと呼ばれる秋によく見られる巻雲、光芒をのぞかせる高積雲など、たくさんの種類の雲が映っていたことに気づいたのだ。当時、雲はさまざまなダンスを自分の前の前で踊っていてくれたのに、僕はそれをまったく見ていなかった。ショックを受けると同時に、少し申し訳なく思ってしまった。本書を読まなければ、これからも旅先で素敵な雲に出会っても気づかずすれ違っていたかもしれない。
朝目覚めて、まず天気を見るという人は多いでしょう。それと一緒に雲を探してみると、空を見上げるのが楽しくなるかもしれませんよ。

投稿: tanarr 